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帰国30周年記念リサイタル
スペイン わが心の歌 
 2015年10月17日@Hakuju Hall 

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お祝いのことば 

 告げられた「30周年記念リサイタル」の文字に感慨をおぼえながら、「演奏予定曲」の一覧を眺めてみる。改めて思うのは、谷めぐみが心のすべてを寄せつづけてきた「スペインの歌」というものの素晴らしさである。よく言われる「情熱」と「哀愁」、スペイン芸術のキイ・ワードと言ってよい「粋」の香りという共通項のもとで、これらの歌たちは、なんと多彩な性格をそなえているのだろう。西ヨーロッパに位置しながら、古来中近東やアフリカからの人種、文化を受け入れてきたスペインの特殊な歴史、それを踏まえた国内各地方それぞれの民俗的伝統の多様さが、そうした多彩さの源になっている。谷めぐみがしてきたように、この豊かなパノラマを把(とら)えきり、歌のひとつひとつにふさわしい表現を与えて聴きての耳と胸とを深くうるおすのは、思えば大変な仕事である。天賦の資質に加えて誰にも負けない熱誠、30年の年輪。谷めぐみが世に在ることを改めて天に感謝せねばなるまい。

                                          濱田 滋郎(音楽評論家・スペイン文化研究家)

 

光陰矢のごとし~El tiempo vuela

 「スペイン歌曲を歌いたい」その思いだけを胸に単身渡西。バルセロナでの出会い、スペイン語との格闘、厳しくも楽しいレッスンの日々、街歩きの楽しみ、かけがえのない友人との思い出、マエストロの御前での演奏、「百人会議の間」での特別演奏会、再会を期しての旅立ち…。そんな古きよき時代の冒険物語のような留学を終え、右も左も分からない東京で初めてのリサイタルを開いたのが30年前の秋、1985年10月25日でした。振り返れば、これもまた新たな、そして無謀な冒険の始まりだったのかもしれません。以来、確たる見通しも覚悟もなく、ただやみくもに突き進むだけの私を、本当に多くの方々が、本当に様々な形でご支援くださいました。皆様に賜りましたお心に衷心より感謝申し上げます。 

 スペインには実に多くの、実に個性豊かな歌があります。ファリャ、グラナドス、ロドリーゴらスペインの作曲家による芸術歌曲、サルスエラ、各地の民謡、街角に流れる小唄、クリスマスの歌、祈りの歌、恋の歌、別れの歌、子守り歌、リズム弾ける踊りの歌etc。その音楽にあふれる凛々しさと潔さ、己の生を甘受し、愚直なまでに一途に生きる人々の心は、洋の東西を越えて、人間存在の哀しさ、哀しさゆえの愛おしさを伝えてくれます。時を経てもなおスペインの歌は輝きを増し、艶やかな色彩を放ち、私を魅了し続けています。 

 歌で語り、歌で笑い、歌で泣き、歌で祈る。そんな「歌心」を教えてくれたのもスペインの歌でした。スペイン歌曲との出会いがなければ、私はとうに歌うことを離れてしまっていたでしょう。 

 今回は記念の年にちなみ、スペインの名作曲家による名歌曲、名作品の数々を、一村一品ならぬ一人一曲、ずらりと並べたプログラムを組みました。『スペインわが心の歌~Canciones españolas, tesoros de mi corazón』珠のような歌の数々を存分にお楽しみください。

                      2015年10月17日       

                                                       谷 めぐみ          

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