第18回Recital スペインわが心の歌
Canciones españolas, tesoros de mi corazón
2008年10月4日@Hakuju Hall
Cantante del alma~魂の歌い手
谷めぐみは、美しい声、洗練されたテクニック、そして極めて自然な語り口を兼ね備えた素晴らしい歌い手である。真実にあふれた深い情感と多彩な表現力により、彼女の演奏は、歌詞が描き出す世界をかぎりなく大きく広げている。
スペイン歌曲を歌うに際しては、端正なスタイルを保ち、内容を深く洞察し、しかも、ただ単に各作品の異国的特徴のみならず、それらの最も深い本質を的確にとらえている。
谷めぐみが大きな支持を得ることを、そして、その天分によって、価値ある音楽活動を展開して行くことを強く希望する。
谷めぐみを讃えて
スペイン歌曲を専門とする数少ないソプラノ、谷めぐみを、デビューしたての頃から私は聴いてきた。そして聴くたびに、この人にはスペイン歌曲を歌うための豊かな天性があると思った。
谷めぐみの声は熱い。言うまでもなく情熱はスペインの芸術に欠かせない要素で、炎を秘めた声を持つことは何よりふさわしい資質である。しかしまた、スペインの芸術は、情熱があればすべて良いわけでは、けっしてない。そこには、ある微妙な「感じやすさ」の要素も、ぜひなければならない。この要素が生かされてこそ、私たちを真に魅了する独特な宿命感を伴った哀愁や詩情、そしてスペインの芸術の鍵となる「粋(いき)」が生まれる。
谷めぐみの歌には、その「感じやすさ」が充分に具わっており、だからこそ耳に快いばかりでなく、胸の内側に強く響く。
二十年以上、打ち込んでの年月はかりそめではない。ここに歌われる、ひとつひとつ懐かしい面差しを持つスペインの歌たちはみな、年輪の放つ掛替えない香りを帯びて、私たちの心に染みるに違いない。