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第26回Recital  スペイン浪漫Ⅲ 
Mi España Romántica III

~E.グラナドス生誕150年、F.モンポウ没後30年に捧ぐ~
Homenaje a E. Granados y a F. Mompou 
en el 150 Aniversario de su nacimiento y en el 30 Aniversario de su muerte


​2017年11月19日@Hakuju Hall

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スペイン歌曲の「真実」を聴く

 「世界一」とも言われる豊富な民謡のパノラマを背景に持つスペイン歌曲は、独特な音階(民族的旋法)、節まわし(“こぶし”を含む)、固有のリズムをそなえた曲が多いことから、つい「どれを聴いても同じようで、ローカルな面白さが売り物のジャンル」ととらえられがちである。が、一度でもよく聴き込んでみるなら、そこには量り知れぬほど多様なヴァラエティが秘められていると分かる。情緒表現にしても、陽気な笑いやユーモアから、切実な想い、嘆き、涙まで、ありとあらゆる人間感情の姿がそこには表わされる。

 したがって歌い手は、そうしたすべてを歌いきることのできるエキスパートでなければならない。谷めぐみが全身全霊を捧げての「スペイン歌曲リサイタル」に、私はいつも上記のことを強く感じてきた。今年もまた、ここにひとつの「真実」を聴きたい。                                       

音楽評論家・スペイン文化研究家 濱田滋郎

Bienvenidos

 1985年春のある日、私は、師マヌエル・ガルシア・モランテと一緒に、フェデリコ・モンポウのご自宅を訪ねました。マエストロの作品をご本人の前で歌わせていただくことになったのです。ソファに深々と腰をおろしたマエストロとカルメン・ブラーボ夫人が迎えてくださいました。あぁ!この方がフェデリコ・モンポウ!ちょっぴり緊張したことを覚えています。ご挨拶の後、〈雪〉〈牧歌〉など数曲を、そして最後に、名歌〈君の上にはただ花ばかり〉を歌わせていただきました。師のいつも通りの柔らかいピアノに包まれて歌っている内に緊張などどこへやら、すっかり夢み心地の私。演奏が終わると、長身のマエストロはそのまた長い腕をゆっくり挙げ、にっこり微笑んで仰いました。「Muy bien(とてもいい)!」

 数週間後、師は、エンリケ・グラナドスの末娘ナタリアさんのお宅へも連れて行ってくれました。「パパの曲を日本人のniña(小さな女の子)がこんなに上手に歌うなんて!」と、喜んでくださったナタリアさん。「メグミのことは忘れない」と、固く抱きしめてくださったナタリアさん。美しい銀髪とお父様似の大きな瞳が印象的な、素敵なおばあちゃまでした。

 エンリケ・グラナドス生誕150年、フェデリコ・モンポウ没後30年、大切な記念の年に、二人のマエストロによる名歌曲の数々、そして縁の作曲家達の作品をお届けできることを嬉しく思います。19世紀から20世紀へ。世紀の境を越え、懐かしく共鳴し合うスペイン歌曲の魅力をお楽しみください。

2017年11月19日
谷 めぐみ
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